なぜ訪問看護では人手が足りなくなっているのか
訪問看護の人材不足は、現在の在宅医療を支えるうえで大きな課題となっています。とくに高齢化が進む日本では、自宅で療養したいと考える人が増えており、その受け皿となる訪問看護の重要性は年々高まっています。その一方で、現場では人材確保が追いついていません。
主な要因としては、「需要に対して看護職員の数が不足していること」「事業所の経営が厳しく処遇改善が進まないこと」「身体的・精神的な負担が大きいこと」の3点が挙げられます。まずは、訪問看護を利用する人が急増している一方で、人材の確保が思うように進んでいない現状を見ていきましょう。
利用する人は増えているのに、担い手が足りない
厚生労働省の調査によると、2021年時点で訪問看護の利用者数は全国で約58.7万人に達しており、10年前と比べておよそ3倍に増加しています。高齢化の進行や在宅療養の推進、医療技術の進歩などにより、訪問看護のニーズは急速に広がっています。
しかし、2020年時点で就業している看護師約128万人のうち、訪問看護ステーションで働く看護師は約6万人に過ぎず、全体の4%程度です。さらに、2025年には約13万人の訪問看護師が必要と見込まれていましたが、この時点でも必要数には程遠い人数しか確保できておらず、人手不足が慢性化しています。
給与や働き方を見直しにくい現場の悩み
人材不足が解消されない理由の一つに、訪問看護事業所の経営の厳しさがあります。2022年度の調査では、訪問看護事業所の約3割が赤字または収支差率ゼロ以下で運営されているとされています。このような状況では、給与を引き上げたり、働きやすい環境を整えたりしたくても限界があります。
その結果、人が定着しにくく、現場の負担がさらに増えるという悪循環が生まれます。また、夜勤がない一方でオンコール対応や緊急訪問があり、医療依存度の高い利用者への対応が続くことで、心身の負担を感じる人も少なくありません。
人手不足を支えるために進められている取り組み
こうした状況を受け、国でも訪問看護の人材不足に対応する支援策を進めています。代表的なものが、賃金の引き上げや設備投資を行う事業者を支援する「業務改善助成金」や、労働環境の改善に取り組む中小事業者を対象とした「働き方改革推進支援助成金」です。
これらの制度を上手に活用しながら、現場の負担を少しずつ軽減し、働き続けやすい職場づくりを進めていくことが、今後の訪問看護を支えるうえで欠かせない取り組みといえるでしょう。